
今回からXBeeのネットワークに関する記事を掲載していきます。
XBeeには3種類のファームウェアが存在することは、5月8日に掲載した「XBeeモジュールの使い方(3種類のファームウェア)」で紹介しています。今回はネットワークに絞り込んでそれぞれの特徴や用途を解説していきます。
XBeeモジュールには3種類のファームウェアがあり、それぞれ異なる無線通信プロトコルをサポートしています。3種類のファームウェアは802.15.4, ZigBee, DigiMeshの3種類です。以下に、ネットワーク構成の視点から各ファームウェアの特徴、長所、短所、用途を詳しく比較・整理します。
(1) 802.15.4
・概要
IEEE 802.15.4は、ZigBeeやDigiMeshの土台となるベースレイヤーの規格です。最もシンプルで軽量なプロトコルでアドホック通信や独自プロトコル構築向き。アドホック通信とは、アクセスポイントを経由せずに、無線LAN機器同士が直接接続して通信を行う方式です。
・ネットワーク構成
スター型ネットワークが基本であり、コーディネータとエンドデバイスのみで構成されます。また、マルチホップやルーティング機能は持ちません。
・長所と短所
軽量かつ高速で低レイテンシです。通信制御がシンプルであり、自由なプロトコル設計が可能です。一方、短所はメッシュネットワークが不可であり、リレー通信できません。また、自動再送や信頼性通信の仕組みが少ないという短所があります。
・用途例
1対1又は1対多のシンプルなセンサーネットワークであり、学術実験やプロトタイプ及び独自プロトコル開発に向いています。
(2) ZigBee
・概要
ZigBeeは802.15.4を基にした階層構造型ネットワークプロトコルで、コーディネータ・ルーター・エンドデバイスの役割分担があります。スマートホームや産業用途で広く利用可能です。
・ネットワーク構成
ツリー型またはメッシュ型であり、コーディネータ1台、ルーター複数、エンドデバイス多数の構成になります。最大ノード数は65535です。
・長所と短所
自己修復可能なメッシュネットワークに対応しており、省電力機能(スリープ・アクティブ切り替え)が豊富です。また、標準化されており、ZigBee認証されている異なるメーカー間での相互運用が可能です。
例えば国内で入手可能なZigBee認証されている機器としてはConbee II / RaspBee II(Dresden Elektronik製)があります。USBスティック型やRaspberry Pi用のZigBeeモジュールであり、ZigBee 3.0対応(deCONZソフトウェアで管理)しています。
一方、短所はプロトコルが複雑で設定がやや難しいことです。また、オーバーヘッドがあり、通信遅延がやや大きく、コーディネータが常に起動していないとネットワークが維持できないことです。
・用途例
スマートホーム(照明、温湿度、ドアセンサ等)や工場のセンサーネットワーク及びビルのエネルギー管理等に使用可能です。
(3) DigiMesh
・概要
Digi社独自のフルメッシュネットワークプロトコルであり、全ノードが対等(フラット構造)です。すべてのノードがデータを中継可能です。
・ネットワーク構成
完全なメッシュ構造(フラット)であり全ノードが同じ役割(コーディネータ不要)を持つことが可能であり、任意のノードがスリープ可能であるため低消費電力向けと言われています。
・長所と短所
コーディネータが不要 なので高い冗長性・柔軟性があり、自己修復型メッシュで、ルート障害時もリカバリ可能です。また、バッテリ駆動メッシュ中継が可能です。
一方、短所としてはDigi独自プロトコルであるためZigBeeとの互換性はありません。また、ノードが多くなるとネットワーク構築時間がかかり、通信遅延がZigBeeよりやや大きくなると言われています。
・用途例
過酷な環境下の無線センシング(農業・インフラ監視等)や低消費電力が求められる広域センサーネットワーク及びメンテナンスが困難な場所での自律的ネットワーク構築が可能です。
項目 | 802.15.4 (IEEE 802.15.4) | ZigBee (ZigBee Alliance) | DigiMesh (Digi独自) |
ネットワーク構成 | スター型 | ツリー/メッシュ型 | フルメッシュ型 |
中継機能 | なし | あり(ルーター) | 全ノードで中継可能 |
スリープ機能 | 一部可 | エンドデバイス中心 | 全ノードスリープ可 |
コーディネータ必要 | 必要 | 必要 | 不要 |
消費電力 | 低 | 中〜低 | 低(ルーターもスリープ可) |
設定難易度 | 易 | やや難 | 中 |
用途例 | 独自通信、試作機 | スマートホーム等 | 過酷環境の長距離監視 |